半導体開発が新局面へ:原子レベルでの構造制御に世界初成功

研究者らは、電子顕微鏡法と人工知能(AI)を活用し、マイクロチップ内における原子の「短範囲秩序」(SRO)の直接観測に初めて成功しました。この発見は半導体設計の概念を変革し、量子コンピュータやニューロモーフィック技術の発展につながると期待されています。

半導体開発が新局面へ:原子レベルでの構造制御に世界初成功
著者:ローレンス・バークレー国立研究所。出典:techxplore.com

マイクロチップ内部では、原子は無秩序に配置されているのではなく、半導体の電気伝導性に影響を与える特定の規則性に従っていることが明らかになりました。ローレンス・バークレー国立研究所とジョージ・ワシントン大学の共同研究チームは、この「短範囲秩序」と呼ばれる構造を初めて捉えることに成功しました。SROの性質を理解することで、禁制帯幅(結晶内のエネルギーギャップで、伝導性に影響する)といった半導体の主要特性を制御し、所定の特性を持つ材料を設計する道が開かれます。

これまで、結晶内に混ざる微量不純物原子(例えばスズとシリコン)の配置は解明されていませんでした。このような不純物の濃度は、秩序だった大きな領域を形成するには低すぎる上、従来の顕微鏡法では隠れた局所的秩序を検出できなかったためです。この課題を解決するため、研究チームは機械学習アルゴリズムとエネルギー選別型4D-STEM法を採用。これによりコントラストが向上し、繰り返し現れる原子配列のパターンを捉えることが可能になりました。AIは六種類の異なる原子配列パターンを特定しました。研究者らはさらに、数百万原子から成るシステムをシミュレーション可能な計算モデルを構築し、その結果を実験画像と照合。これによりSROの存在が確認され、それが半導体の特性にどのように影響するかを解明しました。

短範囲秩序を制御することで、量子コンピュータ、ニューロモーフィックチップ、新型センサー向けの材料特性を調整できると考えられています。本研究は、実質的に原子レベルでデバイスを設計する可能性を初めて切り開いたと言えるでしょう。